イタリアンレストランの社長

学生時代にアルバイトしていたイタリアンレストランは、ただ食事ができる空間に留まらず
突然、お客さんと店長とのじゃんけん大会が始まったり、スタッフがお勧めメニューや食後のスイーツのお知らせに、黒板を持って店内を歩き回ったりするような、エンターテインメント性あふれるレストランでした。

中でも一番度肝を抜いたイベントは、歌の上手なスタッフが小1時間、その喉をお客様にお聞かせするというもの。なんでも社長がその女性社員さんとカラオケに行った時にあまりの歌のうまさに感動し、これは生かさなければ、と思ったのがきっかけらしいです。
有名人でもなんでもない、ただのレストランスタッフがいきなりマイクを持って歌い始める光景にはどんなお客様でも一瞬引きますが、わりと皆様楽しんでおられました。

そういったいろんなアイデアを実行する社長、次なるアイデアは生演奏の「Happy Birthday to you」
それまでは、お誕生日の方にはスタッフ全員でアカペラでお誕生日ソングを歌っていましたが
私がピアノを習っていることをどこからか聞いた社長が、次のお誕生日ソングにはあなたのピアノで伴奏してちょうだい、と一言。

もう何年もピアノには触れていなかったので恐怖でしたが、その日から猛練習をしてお誕生日に備えていました。
そしてとうとうその日がやってきたのです。
伴奏の事を考えると仕事も上の空状態。刻一刻と近づくその時に緊張は最高潮です。

ホールの電気がふっと消え、私のピアノが響き始めました。
手ががくがく震えてしまったけれど、なんとか間違えずに演奏できたことにホッとしました。
お誕生日のご本人が感動して涙されているのを見たら、私まで泣けてしまいました。

ただのアルバイトの私に、貴重な機会を与えてくださった社長には感謝です。
次々とエンターテインメントのアイデアが思い浮かぶ社長、きっと今でも新しいアイデアを生み出している事でしょう。