ウソつきは泥棒の始まり

大学一回生の頃、私は「東京でスタイリストとして働く5歳上の彼氏がいる」という設定でした。もちろん真っ赤なウソだったのですが、一人に話したところ気づいたときにはサークル全体に広まり、取り返しのつかないことになっていました。
架空の彼氏の名前は「空」で、サークル内では「スカイさん」と呼ばれていました。当然のことながら、私が決して自分から彼氏の話をしないことから、彼氏彼女がいない部員たちは「○○って全然のろけないよね」などと好感を持ってくれさえいました。
あるとき、他大学の男の子たちを交えて練習をする機会があり、彼氏がいない部員の女子たちが燃え上がりました。積極的にセッションを持ちかけたり、アドレスをゲットする強者もいました。
私が「あんなウソをつかなければ……」という目で楽しそうな光景を眺めていたところ、彼氏がいない身でなおかつ積極的になれない部員の女子が「○○はどうして落ち込んでるの?」と聞いてきました。
そのとき私は「実は彼氏と別れたんだ」とようやく言うことができました。