先輩の引退

中学生のころからバンドに憧れていた私は、大学生になって軽音サークルに入りました。先輩方も、同期もともて仲が良く、とても居心地の良いサークルでした。特に私は先輩と仲良くして頂いて、その中でも通称「鬼さん」と呼ばれる先輩にすごく懐いていました。その先輩はひとつ上の学年で、幹部を任されているサークルの中心人物でした。無愛想で、パッと見たときの顔が恐くての鬼さんというあだ名。実際、真面目で厳しい人でした。でもその厳しさ以上の優しさをもった先輩で、お兄ちゃんが出来たみたいで嬉しくて、毎日サークルへ顔を出しては先輩にかまってもらう日々でした。私たちが2年生になった夏の合宿。私たちのサークルは、就職活動等のため3年生の秋で引退することになっています。そのため、3年生の先輩と行ける最後の合宿でした。とても楽しいはずの合宿が、これで最後かと思うと寂しくて悲しくて、毎晩泣きながら鬼さんに辞めないでくださいとお願いしてしまいます。それは私だけでなく、同期みなも同じ願いでした。そんな私たち後輩を優しい目で見つめながら、ただ頭をなでてくれた先輩。それが嬉しくてまた泣いてしまう。その繰り返しで、結局合宿中、ずっと泣いていたような気がします。その秋、引退の舞台ではもうこれ以上泣くことなんでないんじゃないかというくらい涙を流しました。でも打ち上げの場で、本当の最後くらい、笑って見送ろうと決めて、笑顔でお疲れさまでした、と伝えました。するとまた優しく頭をなでてくれます。想いが溢れそうになって涙が出そうでしたが、根性でこらえました。あの日の先輩の最後のステージは、本当にカッコよくて、まだ目に焼き付いています。