卒業研究に没頭した4回生の思い出

私は電子工学が専攻で、卒論に半導体素子の基礎に関するテーマを研究しました。
私達の頃には、就職内定は5月に早々と貰う事ができ、残りの大学生活の時間を精神的には余裕を持って過ごす事ができました。
卒論は、少し実験をし、理論解析などを加えれば、大抵は合格点がもらえ、心血を注いでやる事もないのが実態でした。
工学部では修士過程に進む学生が増えている時期で、進学にも憧れましたが、私を含め親しい友人達は、家庭に余裕のあるメンバーが少なく、皆進学を諦めました。
そんなメンバー間で、いつしか卒論を修士論文に匹敵するぐらいの物に仕上げてやろうという雰囲気が生まれました。
夏休み前には、実験の道筋の中で、不足している実験装置や素子を試作する装置をどうするかを考えました。予算がなく、可能な限り装置も自作する必要があったのです。
産業用電子機器を製造販売する中小企業でアルバイトをしていた仲間の紹介で、その会社のジャンク部品や様々な物を貰い、工具も借用して装置作りに励みました。
夏休み頃からは、休みを返上し、週に2回は実験室に白衣を敷き詰め、仮眠しながら実験を続けました。
唯一の楽しみは、安い中華料理店で、仲間が集まり、実験の進捗を語り合い、励ましあう事でした。
こうして冬には論文にまとめ上げ、皆卒業を迎えました。そこまでしなくても良かったのですが、この集中して努力した経験は、その後も企業のエンジニアとして困難な場面に出くわした時、大いに役立ちました。