大学6回生との思い出

私は京都のある大学で学びました。工学部の電子工学を専攻していました。
工学部では実験科目も必須科目としていくつかありました。その中に、2回生で履修すべき化学実験がありました。
実験は4人程度のグループで実施し、毎回レポートを提出する必要がある科目でした。
そんなグループ内に、私達より遥かに年上と思われる学生が2人いました。
その学生は、実験を進める時は、全く何もせず、ただ実験を眺めているだけです。
そして、実験が終わりレポートを書く段になると、レポートを毎回見せて欲しいと懇願して来ました。
実験には教授以外に2人の実験助手が付いていましたが、その実験助手とは彼らはいやに馴れ馴れしいのです。
聞けば、彼らは実験助手と同期入学で、もう大学に6年いる6回生だったのです。
彼らと私達のグループの交流は、当初はその実験科目の授業の時だけでしたが、7月のある時、アルバイトでボーナスが出たからご馳走すると2人の6回生が私達の仲間4人を川床に連れて行ってくれました。
それ以来、時々一緒に夜の街で遊びました。酒が飲める年齢になったばかりの私達とは違って、夜の街での彼らの振舞いは、学生と言うより、世慣れた社会人と行った風でした。
余り個人の状況に立ち入る事はできませんが、苦学生でアルバイトに明け暮れ、いつしか2年も留年していたのです。
学生として勉学の事は私達が教え、社会や大人の世界を彼らに教えてもらうと言う不思議な関係が2年程続き、その2人は7年掛かって大学を卒業して行きました。
勉学はできなくても、こうした雑草のように強く、それでも気楽そうに人生を楽しんでいる彼らの様な人間は、社会に出てむしろ私達より成功するのだろうと思わせるものを持っていました。
私達にとって、貴重な先輩との不思議な交流でした。