宅配便のお兄さん

大学生になって一人暮らしを始めたとき、全部で8部屋しかない小さなアパートに住んでいました。私は趣味がマンガと小説を読むことなので、少ないお金をやりくりしてはおもしろそうな本をネットで買い集める日々を送っていたんです。
連載している作品で単行本を買って追いかけているものもあったので、発売日が重なったときなんかは、毎日のように宅急便が届いていました。
そして何ヶ月か経ったときに(だいぶ遅いんですが)、宅急便のお兄さんがいつも同じ人だということに気づいたんです。
まあでもだからといって何をするわけでもなかったんですが、1年ほど経ったとき、ちょっとしたトラブルがあって同じアパートの中で部屋を替わることになりました。4階から2階へお引越しです。そしていつものように荷物が来る予定だったので、家で静かに待っていると、いつものお兄さんっぽい階段を登る音。でも、来るかなーと思ったら通り過ぎてもっと上へ行ってしまったんです。ああ、別の人の荷物か、とまた待っていると階段を下りる音。玄関のチャイムが鳴りました。やっぱりいつものお兄さん。
「いやあ、お部屋かわられたんですねえ。間違えて上にいっちゃいました」
その笑顔にキュンとしちゃったのは、これはもう仕方がなかったですよねえ。いえ、そのあとも特に何もありませんでしたが。